富士山に登ったことpt,3
これまでの道と見るからに様子の違う
富士山特有の赤土とゴツゴツとした大きな岩だらけの道。
気付けば、かなり上にきたらしく、もう周りには野生で生きている動物がいなく、
生き物は、僕たちのような登山客だけがいるような標高まで来ていた。
友達が「富士山は山の傾斜が急だから、晴れていたら、この辺りから、頂上までの道のりが一望できるんだけどな」
と言ったけど、
当然、その日は霧がかかっていたため、富士山の頂上は見ることができず、
ただ永遠と山道が続いているだけだった。
そこから先の道はこれまでの道と違い、本当の山道だったので、僕たちは、ストックを使い、
杖としてつきながら、ひたすらに歩いた。
進むにつれてどんどん空気も薄くなり、気温も下がっていった。
高山病にならないためには、
空気をよく吸って吐くことと行く前にネットの情報などで知っていたので、
少し、息が上がれば、立ち止まり、大きく深呼吸してと言うのを繰り返し登っていった。
六合目、七合目と順調に山小屋を超えて、黙々と登っていると、
雨がとても強く降り出してきた。
僕たちは準備していたカッパなどを着込んで、それでも怯まずにひたすらに進んだ。
途中、岩場に手をついて、登るような場所があり、
そこの岩が雨で濡れていて、足や手がとても滑り、
さらに、高い標高で吹く風は強く冷たく、
何度も体をもってかれそうになっているのを滑りそうな岩にしがみついて、
耐え抜いた。
雨は一向に弱まる気配もなく、風もまるで登山客を拒むように強く冷たく吹き続けた。
だけど一番辛かったのは、
自分たちが登ってきた道のりを振り返っても、
どれだけの高さにきたのかわからなかったことだ。
景色が見えていれば、きっとその高さは、自分たちの達成感になって
自分たちを癒してくれただろうけど、
僕たちは振り向いても、ひたすらに白い霧に包まれていて何も見えなかった。
自分を励ますのは自分しかいない。
僕はそう思って、自分で自分を応援し、鼓舞し足を前に進め続けた。
昼頃五合目を出発して、
おそらく四時間ほどが経過した頃、
僕たちが宿泊を予約している山小屋についた。
そこでタオルをもらい、ずぶ濡れのカバンとカッパをふき、
大きく息を吸い込み、今まで懸命に動かしていた足を休めて床に座り、
やっと大きな達成感と充足感を味わった。