富士山に登ったことpt,4

blog

山小屋には夕方の五時頃着いた。

 

山小屋では本来フェリーの雑魚寝のような感じでみんな横並びで寝るらしいが、

今はコロナ禍のため、雑魚寝するスペースがそれぞれパーテーションされていて、そこに一つ一つ寝袋が置いてあった。

 

そこが一つの部屋になっていて、その部屋の中には多少のプライバシーがあった。

 

その空間に荷物を置いたとき

やっとついた安心感と、

大雨の中をひたすらに登ってきた緊張感が緩み、

心がため息をついた。

 

そこで、朝までゆっくり寝てから、次の日にまた登りだしても良いし、

ご来光を見るため、朝三時頃にその山小屋を出発して、

日の出とともに、頂上に着くのもアリだ。

 

僕たちは当然、ご来光をみたかったので、そこで仮眠を取り、また三時頃に登り出すことにした。

 

山小屋では、ご飯を出してくれるサービスがあり、そこの山小屋のご飯はカレーライスだった。

 

味なんかほとんどしなかった。

レトルトまんまのカレーライスと、味のほとんどしないゆで卵、簡単に作れるワカメのスープがそこの献立だ。

本当に普通に暮らしていたら、非常食などで食べるような代物だった。

 

だけど、これまで、雨の中をひたすらずぶ濡れで登ってきた

僕ちたにとってはどんなご馳走よりも身に染みた。

きっと砂漠の中で、オアシスを見つけるのはきっとこういう感じなんだろうと思う。

 

ご飯を食べているとき、山小屋にいた誰かが騒ぎだし、外にかけて行った。

どうやら、外がやっと晴れてきたらしい。

 

その時は僕たちもすぐに外に出て、

雲と雲の合間にあるつかぬまの晴れから、下の世界や景色をやっと見ることができた。

 

その景色は本当に圧巻だった。

 

山の麓から延々と続く、山道。

そしてそれを一歩一歩確実に登ってくる、鮮やかな色のレインコートを着た人たち。

真っ白の雲が海の波のように連なり、果てしなく広がり続ける雲海。

その雲海の間に間に広がる、小さいけど大きな街。

雲の合間に差し込む太陽の光を反射して、七色に輝く湖。

 

登山はどんなにハードなことを体験しても、何度も登りたくなるって一緒に行った友達は言っていたけど、

その時は、その友達の言葉の意味を感じることができたような気がした。

 

その景色は僕たちをまるで魔法のように癒してくれた。

全ての瞬間はこの景色を感動するために作られたんだと僕は思った。

 

その時には僕の体は問題なかった。

地上にいる時と対して変わらない感じだと思っていた。

 

だけど、もしかしたら、それはもう始まっていたのかも知れない。

Pocket
LINEで送る


%d人のブロガーが「いいね」をつけました。